娯楽三昧

迷宮式娯楽三昧・全年齢版

【NG】なぜ死印の良さは消えたのか

switchでNGをクリアした。前作死印の出来に実家のような安心感を覚えて今作も購入したのだが、端的に言ってしまえば前作にあった良さはどこに消えてしまったのか、って感じである。
かくやちゃんと大人の遊びをしたいすぎるだけで値段分の価値はあったので別に損したとか評価が殊更低いというわけでもないのだが……。

なんでこんなにNGが怖くなくて死印は怖く、面白く感じたのか。
自分の中のホラー感を見つめ直すとともに、怪異の書き方ってどうするのが良いのかの雑感を列挙してみる。

  • 怪異に統一性はあってはならない

NGの怪異は基本的に命名に法則性があった。
金太郎、かぐや姫、浦島太郎といった昔話系の名前である。

これがまずい。

怪異の怖さとは「理解不能」なことになると思う。
「理解不能」とは「情報の欠落」と「不条理」さであり、そこに人間の論理で類推し続ける(結論が出せないので)ことが怖さだ。
人間は情報の欠落を許容できない。虐められた人間がいればそちらにも非があるのではないかとゲスの勘ぐりをしてしまうのもそれで、理由や物語を作ろうとしてしまい、あるがまま需要できないのだ。

これは必要悪といったところで、たとえば草むらが揺れたときに「そこに獣が潜んでいるのでは」と想像せずに「なんか揺れた」で終わらせる人間が大昔にいたとしたら死ぬに決まっている。

この生存に必要な機能を逆手にとってバグ技を押し付けてくるのがホラーの怖さである。
なのに統一性があっては理解可能、ひいては怪異のバックにいるより上位の存在を考察することができ、結論できずとも確度の高い材料が提供されてしまえば一先ずの心の安寧ができてしまう。

死印の怪異は都市伝説系であり、それらの名前に規則性はここまでカッチリとは存在しなかった。「花彦くん」は花子さんモチーフなのは目に見えているがオマージュ、パロディの範囲だし、「くちゃら花嫁」や「ずう先生」は不思議な響きや名称の組み合わせにわくわくしたのだが……。

しかも統一性があるせいで怪異が理不尽な現象ではなく対処すべきモンスターシリーズの一種となってしまった。怪異、幽霊に制御できる、できそうな印象のある整理された名称は望ましくない。

  • 怖さの性質が暴力

今作、基本的に敵の脅威が暴力一辺倒だったので怖いは怖いでもそれは冷たい手が首筋に触れるような恐怖ではなく刃物を前にしたときの恐怖だった。そりゃあ命の危機なら怖いだろ……。

怪異に暴力的な意味の強さがあるのは否定しないんですが(じゃないと倒せると思えちゃうし)、斧だの日本刀だの攻撃能力が直接的すぎて「恐れるべき正体不明の存在」が「攻略を考える強敵」になってしまうんですよね。
それはモンスターなんだよな……。

  • 敵の正体が明確

死印の敵、というより「現象」は正体不明でした。正体不明の現象を解決するため都市伝説に関わっていく……という導線でしたが、今回は正体不明の人格を持った怪異により事件に巻き込まれていきます。
怪異で出自がわからないとはいえ、意思疎通ができる相手であり、かつ最終目標「その怪異を倒す」が明確である以上、各怪異を倒すのは「クエスト」でしかなくなっている感があります。

  • 探索パートがびっくり演出ばっか

幽霊がふわっ……とでてこられてもなぁ、という雑さを感じてしまった。
死印は驚いたんだけど、NGは舞台が卑近な場所になってるだけに「路地とか公園にそんなポンポンいられても困るわ!!!」と突っ込んでしまったのもあり。

死印、花彦くんパートで初めてでてきた幽霊はマジでこわかったんだけどな……。

  • 場所に特別感がない

夜の公園だの単なる隣町だの、シチュエーションが当たり前すぎて怖くないのがこまってしまった。
いや、夜に道を歩いているとそこにおかしなものが……はこわいシチュのはずなんだけど。
探索っていうのとはあわないよなぁ。

  • 死印のよかったものとはなにか

ひとえに必要最低限のミニマムさが上手い方向に左右していたのだと思う。

正体不明の痣。
 それが進行することで死ぬことが明示され、
  不特定多数の者が感染する。

記憶喪失で前知識や取り巻くエピソードのない主人公はプレイヤーと=になり、
 暗闇の荒野を手探りで歩くように事件を解決し、
  ついに真相にたどり着く……。

死印で恐怖を煽っていたプロットが、
構成の変化によりすべて亡くなってしまい、
結果、怪しい手順で現れる怪物を倒す話になってしまったのがNGであると思う。

ただ、UIはこなれたしデストロイはバリエーションが増えたし、良いところもあるんですけどねー……。
でもUIはUIで色ずれが常時しているものなのが酔ってきて気持ち悪くなってしまうし。
主人公も良い子だったけどホラーにすえるにはイマイチ緊迫感にかけるし、そのわりには半端に怖がってくれるのでウーン。
あんま主人公の設定や性格を生かしてないのでプロットありきっぽい感じ。

まあこのもにょりも方向性の問題の気がするので、シビトマギレで主人公が戻ったことによる作風の変化に期待したいです。
ただケモミミ和風幼女人形により怪しいゲームに巻き込まれていく……という導入は最高だし、ヤンデレかくやちゃんに死ぬほど愛されてヤバイめにあう短編ADVと考えたら全然いけるので死印が気に入った人はシビトマギレまでの間にサクッとクリアするのはアリですわよ。

死印 EXPERIENCE SELECTION - PS4

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  • 発売日: 2019/04/25
  • メディア: Video Game
死印 -Switch

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  • 発売日: 2018/06/28
  • メディア: Video Game
NG(エヌジー) -Switch

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  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: Video Game
NG(エヌジー) EXPERIENCE SELECTION - PS4

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  • 発売日: 2020/05/21
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switch版でもグロスチルが普通にあったのでswitchでやりました。画質とか音声をそんな気にするゲームでもないので……。