娯楽三昧

迷宮式娯楽三昧・全年齢版

おまえは今すぐGhost of Tsushimaで伝説となれ

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結論から言うとGhost of Tsushimaはマジで傑作だったので早急に購入し優勝を越えて伝説となれという話をします。

何故ならこれはプレイできる時代劇としての現時点最高峰である。名誉ある死を奪われた侍が修羅の道に落ちていく様とスニークアクション、このストーリーとシステムが完全にあわさることで現代的なゲームシステムに侍を落とし込むことに大成功しているからだ。
侍が好きだから、日本文化が好きだから……だけではなく、日本の精神性や文化を尊重したうえでモダナイズされたお話を展開しているのである。


巷では気軽に「トンデモ日本」や「これでは侍ではなく忍者」、「所詮は海外が作った日本文化」と揶揄されることもあるが、それこそ「トンデモ」言説であると断言できる出来だ。ゲーム性とテーマ、コンセプトを無視し「リアルじゃないから」と批判するのは容易い。リアルは殴り棒として優秀である。リアルはお手本なのだ。けれど、リアルを殴り棒にする人間は、総じてリアルに寄せることが正しいかどうかに無頓着である。


日本刀で銃弾を切る人間が出ていたら「現実じゃありえないw」と茶々をいれるのか? 人型ロボットを見れば「こんなの動く的w」と言うのか? ウルトラマンを見て「街を一番壊してるのはコイツじゃんw」と言うのか? まったくもってナンセンスだ。


日本人は近代ヨーロッパと中世ヨーロッパの区別が付かない。中世ヨーロッパには国という意識は国民にはなかったそうだし、日本人が「中世か?」と言うときは大概はより未来の事案を参照している。Web小説ではナーロッパと揶揄される独自のヨーロッパ観が共有されている。


だが、それでいいのだ。


リアルを見たければノンフィクションを見ればよい。自分たちが見たいのは面白いフィクションであり、ありえない出来事だ。窓からうんこを捨てる西洋文明なんて見たくないから部分的に不採用にするし、後世の文化だけどあった方が見栄えがいいから採用する。それでいいのだ。


その観点でいえば、Ghost of Tsushimaは現実のリアルではなく、作中世界観におけるリアル(リアリティレベル)を完全にコントロールし、物語を始め、着地させた。当人たちは自覚のうえでだ。
スタッフは日本文化を調べ、そこに自分たちのやりたい、そしてこちらの見たいものをトッピングした。トッピングの理由付けも作中でおこなった。それがすべてだ。そこに現実はベンチマークとして介在する余地はない。


本題は、このトッピングの仕方の秀逸さである。
ゴーストオブツシマでは、対馬の地頭である志村家の甥として育てられた男、境井・仁が主人公である。両親を失いながらも伯父に育てられ、将来は志村から家督を継ぐことを期待された、光り輝かんばかりの道を進む侍である。
だが、彼は蒙古との戦で大敗し、志村は虜囚の身となり、自分ひとりが戦場で生きながらえてしまった。しかも、夜盗に助けられるという形でだ。


正々堂々とした戦いでの死は誉れである、といった価値観で生きていた仁は、しかし自分が死んでしまえば伯父を助ける者がいなくなる事実に直面する。対馬も蒙古に征服されてしまう。
これまでどおりの戦いではいられなくなった仁は、自分を助けた夜盗・ゆなの提案のまま、蒙古兵を背後より暗殺する……。


こうして、侍が卑劣な手段を用いることで日陰の道へと落ちていく導線が実に見事。


さらにシステム上での後押しも素晴らしい。

ゴーストオブツシマでは一騎打ちというシステムがあり、戦闘状態にない敵陣に一騎打ちを仕掛けることで一対一の戦いをおこなうことができる。一騎打ちでは敵を一撃で撃破することが可能で、最大3人(後半は装備により5人)まで連続で斬り捨てられる。
耐久力は無視で即死なので、序盤のうちは積極的に一騎打ちで敵を殺すことができる。誉れある侍としての戦いを続けることができるのだ。

しかし、中盤にさしかかれば敵はどんどん強くなる。一騎打ちの際にフェイントをかける、単純に素早い攻撃で敗北する、と一騎打ちの難易度が高まる。一騎打ちとは実力比べであり、実力が伯仲すればするほど勝つのは難しくなり、かつ一対一でも負けるかもしれない相手軍団とひとりで戦わねばならない……。

そんな窮地に立たされて、ついに直面しなくてはいけないのが暗殺だ。そして、これは人数制限のない即死行動である。


強敵がいれば誘き寄せて暗殺し、建物の中に入っては暗殺し、敵の集まりがあれば爆弾を投げ込み一網打尽にする。
最終的には、一騎打ちの有効性は変わっていないのに、プレイヤーもそれを使うことがなくなってくる。そんなときにストーリー上で仁は、偉大なる人物にこう言われるのだ。


「それは誉れある戦いではない」
「夜盗だ」


と……。
このバランス調整とストーリー展開のリンクが見事であり、没入感のある濃厚な時代劇を最後まで堪能することができた。
さらに、敵を殺しているのだからよい、誉れなど浜で死んだわ! と思う我々プレイヤーに対しても、アンチテーゼ、行動の代償を突きつけてくる様も無情感があり大変によいものだった。


さらに海外では忍者が大人気だが、忍者を最後まで名前すら出さないのがすばらしい。そのうえで暗殺をする仁の行動自体に忍者的な要素をくわえることで、侍系でありながら忍者の要素も盛った「日本時代劇見たいモノ全部乗せ」を実現したのだ。


真面目な侍像、手段を選ばぬ侍像、どちらも立て、落とさない。これは文化への敬意、挑戦心、知識がなければ間違いなくできぬものである。そこに冷笑的な現実にはこんな武士は……などといった指摘が入り込む余地はない。この世界は時代劇で、こういった種類の侍のいる世界であることを前提にしているのだ。この前提条件を読めないならもはや再現Vか大河ドラマでしか時代劇を楽しむことは不可能だろう。



ストーリーは面白く、システムは接近戦から暗殺まで申し分ない。装備によっては弓だけで敵陣を全滅させるプレイから気力の回復効率を上げて次々斬り捨てる、音もなく暗殺していく、といった自由度も高い。
グラフィックは現代における最高峰であり、オープンワールドでありながらどこを切り取っても綺麗な濃密さ。
狐や鳥に導かれて目的地に到達する雅な要素から、短編時代劇を見ているようなサブクエストに、写真を撮りたくなってしまう機能満載のフォトモード。


なにもかもが高水準でまとまった、色物ゲームに見えるガチのソフト。
それがGhost of Tsushimaだ。


発売十日でトロコンしてしまうようなオープンワールドゲームは、後にも先にもこのゲームだけの気がする。
ハイクオリティな日本の風景を冒険できるオープンワールド時代劇Ghost of Tsushimaは、時代劇を知らなくともジャンル自体に興味を持ってしまいたくなるほどの傑作である。

ステイホームなこの夏は、Ghost of Tsushimaで対馬に行こう。
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【PS4】Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ)

【PS4】Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ)

  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: Video Game
Ghost of Tsushima Launch Edition(輸入版:北米)- PS4

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  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: Video Game